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写植の現場から
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 出版印刷業界の一員として、写植の日常の現場で何が起きているのか、何を追求していったらいいのかを模索し、ネットワークを広げていくための不定期コラムです。
 みなさまのご意見、ご感想をお寄せください。

文字とDTP

(株) Station S 出版企画部 岡田隆志

●Macintosh DTPのこれから

 PAGE2000があり、Mac World EXPO 2000が終わった今、DTP関係者が変わっていかなければならないことが以前よりもはっきりしてきました。何年もかけて多くの出版関係者によって培われ、完成されていったDTPの出力までの「レール」が崩され、最編成されていく重要な分岐点を、まさに今、迎えているように感じます。
 デザイナー、編集者、組版・製版オペレータ、出力担当者が持っているハードやソフトがいよいよ時代遅れのものになり、買い換えの必要に迫られています。フォント、レイアウトソフト、出力媒体など、完成されたかに見えた従来のワークフローを根本から見直さざるをえない時期とちょうど重なって新しい技術の発表がありました。
 具体例をあげると、次期Mac OSであるMac OS Xにヒラギノ書体がOpen Typeでバンドルされることの衝撃、Adobe In Design日本語組版の多機能さに対する期待……この2点だけでも従来のワークフローが覆される可能性がないともいえません。フォント業界に走る衝撃はもとより、デザインや組版関係者も変革を迫られることは想像に難くありません。
 当社でもこれからの業界の動向に注目し、できる限り迅速な対応をしていきたいと考えています。

●写研DTPのこれから

 雑誌や書籍の編集・印刷にたずさわる人の集まりに参加すると、写研の文字で仕事している私は常に少数派です。すでに写植を離れた人たちに「写研の組版はすごい」という話だけは伝説のように(苦笑)語り継がれているそうです。ですから私のなにげないひとことが、妙に説得力のある発言となって受け止められる傾向にあるようで、こういった場所では戸惑うことがしばしばです。
 いったん写研もしくは写植による文字組版を離れてしまうと、なかなか出会う機会がないのが残念です。私は個人的には、経済的な問題と好奇心からWindows DTPをしています。Macに走らないのは個人レベルでは初期投資額がWindowsに比べて高いことや、組版とフォントの美しさはまだまだ写研にかなわないことを知っているからです。モリサワのフォントでQuarkで組んだとしても、写研と比べて同等程度の品質のものができても不思議には思いません。ただ、写研を使い慣れている者から見ると、ルビの問題、外字の問題にはじまり、校正の容易さや、組体裁の確実さはまだ追いつけていないように感じます。時代とともに変わっていくのでしょうが、なかなか状況が変わってきません。

 見方を変えて発注者の立場に立つと、写研であろうがMacであろうがWindowsであろうが、本当はどうでもいいのです。美しく、読みやすい文字組版が、速く、安く、正確に仕上がればいいのです。そう考えると、たとえば編集者は編集だけ、デザイナーはデザインだけやり、組版は別の専門家にまかせることもありでしょう。要はコストと納期と信頼の問題で、アウトソーシングがそれほど無駄なわけではないように感じます。
 手前みそではありますが、どう考えてもいちばんきれいに組み上がるのは写研のフォントによる組版なので、写植を何年か前に離れた人でも再度、当社のような写研組版製版業者を選択肢のひとつに入れておいてくださるとうれしいです。写研の文字で組んだからといって、みなさんが思っているほど単価は高くないです。そうでなければ私たちも生き残っていけないのですから。

●文字は文化

 写研はIGAS'99、PAGE2000で「本蘭(ほんらん)ゴシック」を発表しました。写研の明朝系で主力書体となっている本蘭明朝体に合うゴシック体をということで、10年かけて開発したそうです(チラシより)。組見本を見ましたが、これは「2000年ゴシック」と標榜するにふさわしい、主張しすぎず、埋没もしない、美しい均衡のとれたデザインでした。当社でも発売と同時に導入する予定です。

Igas99Photo
IGAS'99写研ブース

 写研のフォントの場合、JISコードだけにととまらず、1書体につき約2万字をデザインし、さらにファミリー化をするわけですから、時間がかかるのもうなずけます。しかも縦に組んでも横に組んでもバランスが取れている必要があり、ベタ組みで組んだときにその美しさが最大限に発揮されるようにデザインされているそうです。組み方向によってかな書体を変えたり、詰め組が多くなってきた現在の状況とは方向性をやや異にしていることがおわかりでしょう。
 教科書などを見ると、まだ写研の書体は厳然と生き続けていますし、ベタ組みの格調高さも書籍のなかで光を放っています。
 文字は文化です。活字も写植もフォントも書体も組版も文化と考えれば、写研の書体がそう簡単にこの世からなくなることはないでしょう。Mac OS Xに搭載されるヒラギノ体をデザインした字游工房の鈴木勉氏(故人)は、もとは写研の社員で、スーボをデザインした人だったのをご存じでしたか?

●「このままで大丈夫なのでしょうか」

 「このままで大丈夫なのでしょうか」----いろいろなシチュエーションでこういう質問をぶつけられることがありますが、そんな大それた質問に答えられるはずもありません。
 経営者にとっては、「このまま写研で大丈夫なのか」「このままMac DTPの今のシステムで大丈夫なのか」となりますし、編集・出版関係者は「今のワークフローで大丈夫なのか」となります。印刷関係者は「CTP導入になったらどうなるか」でしょう。デザイナーやオペレータはもっと深刻で、新しいハードやソフトを積極的に使いこなしていかなければすぐに仕事はなくなります。
 大局的な立場でいえば、出版・印刷そのものも文化ですから、その業界で働いている人も文化創造者の一員である誇りを持って仕事に取り組むべきなのでしょう。「このままで大丈夫なのだろうか」を常に考え、今の仕事を続けながら次の一手を模索し続けることぐらいしか思いつきません。その積み重ねによってしか、答えが出てこないように思います。
 文化うんぬんを離れ、身近な話になれば、お客さんに満足してもらう品質と信頼を常に提供していくことしかありません。そうしていくことが、どんな立場の者でも最終的に自分自身に還元される最も確実な方法なのです。

 話が大げさになってしまいました。今回はこのあたりで。

(2000/2/25発表)

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本コラム内容の無断引用、転載を禁止します。

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