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写植の現場から
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 出版印刷業界の一員として、写植の日常の現場で何が起きているのか、何を追求していったらいいのかを模索し、ネットワークを広げていくための不定期コラムです。
 みなさまのご意見、ご感想をお寄せください。

情報革命のなかで

(株) Station S 出版企画部 岡田隆志

●コラムの役割

 長きにわたってご愛顧いただいた本コラムも今回で10回めを迎えました。
 10回を迎えるにあたって過去のコラムを読み返してみましたら、ある部分で誰かを勇気づけた面もあり、ある部分では自身の未熟さをさらしたように感じます。それでも、そのときどきの素直な考えを発表する場を持つことができて光栄です。
 さて、今回でこのコラムはいったん休載しようと考えています。写研の文字を使った製版やDTP作業に関してひととおり言及できたように感じますし、Webというメディアで発信するための文章構成に工夫を持たせたいという欲も出てきましたので、今回をもちましてお休みさせていただきます。長い間ありがとうございました。

●作業の落としどころ

 写研のシステムでトータルにプリプレス作業をするためには、それなりの規模が必要となり、出版する側にとってはアウトソーシングという形を取らざるを得ません。本来、DTPのワークフローが目指していたものは出版サイドがプリプレス工程を1台のデスクトップパソコンで完結させることでしたが、日本語という2バイト文字を使うにあたってさまざまな障壁がありました。ソリューションはいろいろありますが、21世紀に入った今でも出版サイドがすべてをコントロールできていないのが現状です。

 当社のような組版・製版業者もそのおかげで仕事ができるわけですが、仕事の流れ的にいいますと、まだまだ出版する側(私たちから見ればお客様)の意図どおりのものを完全に作ることは難しいように感じます。お互い職人気質のプロでしたら、前回のコラムで述べたとおり、後工程で判断に迷う指定に出くわすことは稀なのですが、残念なことにお客様にはいろんな方がいらっしゃいますから、判断に迷う指定が以前よりも増えたように感じます。

 指定の意味や意図がわからないときには、お客様に直接、あるいは間接的に訊ねれば簡単に解決することもありますが、組版・製版上の基本ルールをどの程度逸脱してまで指定を生かすのかについてお客様に相談しても、質問の意図すらわからないこともあるのです。そういった場合にどうするかの判断を私たち現場の者がしなくてはならないケースが増えてきました。
 どの部分を訊ねて、どの部分を私たちが形として提示していくかの“判断”をするのが大変難しい問題でして、こればかりは経験豊富なディレクターや、お客様と直接接する営業と相談して難局を乗り越えていくしかありません。幸いなことに、これらの判断についてクレームをいただくことはほとんどありませんが、それでも「これで本当によかったのだろうか」という担当オペレータの疑問に対する答えは、次回の赤字戻りまでわからないことが多く、すっきりしない部分ではあります。

 私が考えるにこれらの落としどころは、発注者の立場に立って「この(ちょっとわかりづらかった)指定ならこの程度の出来上がりになるのもやむを得ないかな」と思われるよりも少しだけ見ばえがよいところに落とし込めばいいと、オペレータに説明しています。ただ、実際問題としてその落としどころは編集経験のない人にはわからないかもしれません。難しいところです。

●工程の標準化について

 DTPという作業は、個々のオペレータの「ワザ」に頼る部分がないともいえず、オペレータによって生産性も違いますし、データ作りのためのアプローチから違うことがあります。
 特定の1人が初校から責了までまるごと1冊受け持つやり方ならばそれほど問題にはならないのですが、中規模以上の生産ラインを持つとなると、現実問題として、そういう工程分担はありえません。一定の標準的な作業規準に基づいた工程を各オペレータが遵守してこそ、はじめて品質が保てるのです。考えてみれば当たり前のことなのですが、この認識が足りないと事故につながる危険性を内包することになります。
 DTPワークフローにはそういう面があることを出版と印刷にかかわるすべての人がもっと知るべきではないでしょうか。過去のコラムでもこの点にはしつこく言及しているので、賢明なみなさんにはもうお分かりのことでしょう。

●紙のメディアはなくならない

 私が関わっている専門校の教科課程が印刷物の制作からWebサイトの構築へ変わっていったせいもあり、最近、Webのユーザビリティ(使いやすさ、使い勝手)について考える機会が大変多くなりました。
 Webというメディアと、印刷物というメディアでは文章の読ませ方が違います。概していいますと、Webは見出しを拾い読みし、本文を斜め読みし、必要な情報だけをできるだけ簡潔に速く知りたいというニーズを持ったメディアです。一方印刷物は、ひとつのテーマを掘り下げて深く、そして広く知りたいというニーズを持ったメディアです。
 文章やコンテンツを提供する側は、そのニーズに合ったものを提供していく必要があります。印刷物の二次利用が主目的なWebサイトではユーザビリティの面で劣っているといわざるを得ないのです。その点をWebサイト担当編集者の多くが気づきはじめたのです。そして私も遅まきながらようやく気づき、この冗長な文章をWebで発信することに疑問を感じはじめたというわけです。

 Webのコンテンツを印刷物に劣らない品質を保って配信するためにはPDFが今まで以上に欠かせないものになっていくでしょう。と同時に、PDFのもたらす利便性が、紙に印刷されないマニュアルとして配布されるという危機にさらされているのです。
 印刷物を作るためのソフトウェア操作マニュアルが印刷せずに配布されている現実をご存じでしょうか。この現実は、印刷という文化、その現場に携わる者に対する理解と配慮に欠けていると思うのは私だけでしょうか。困ったときに引く辞書、マニュアルとしてのコンテンツをPDFだけで配布提供するのは開発側にとって経費節約にはなるでしょうが、印刷物を作る立場の者として印字済みマニュアル配布の中止は怠慢行為と言わざるをえません。私の言ってることは時代遅れでしょうか? 同じ感想を持たれた方はいらっしゃいませんか?

 印刷物というメディアの特質がWebなどのほかのメディアに取って代わられない限り、印刷物は決してなくなりません。少なくとも私たちが生きている時代にはそのような変化は起こらないでしょう。ですから出版と印刷に関わる私たちの生きる道が閉ざされることは決してないと思います。

●Webがうながす変化の波

 道が閉ざされることがないとはいえ、安心は禁物です。
 インターネットの普及による情報技術革命は、私たちが生きている社会の経済構造をじわじわと、しかも確実に変革させています。Webという新しいメディアは商品やサービス、流通を大きく変化させています。

 そのなかでも一番の変化は、消費者が商品を買う前に、Webのユーザビリティに接することだと言われています。以前は、その商品の善し悪しを知るためには商品を購入して使ってみなければわかりませんでした。ですから品質が悪いものでも売って(買って)しまえば後の祭りという図式が許されたのですが、Webを通して商品やサービスを紹介したり売買する時代になると、商品の品質に触れる前に、Webサイトのユーザビリティに触れることになるのです。いくら良い商品でも、サイトのユーザビリティが悪ければ、財布の紐をゆるめようという気持ちにはならないのです。この流れは今後15年で確実に変革していくだろうと言われています。

 コンテンツが商品である出版社にしても、コンテンツそのものに付加価値をつけてプレゼンティングするときにWebというメディアを今以上に使わざるを得なくなることは間違いありません。本の内容に興味を持ったユーザが出版社のWebサイトを訪れたときに最初に触れるのは商品ではなく、サイトのユーザビリティなのです。この現実から逃れることはできません。そして、再版や取次など、既存の流通の仕組みは次第に崩壊し、再編されていくのです。
 かつて出版・印刷業界にDTP化の波がじわじわと押し寄せてきたのと同じ、あるいはそれ以上の波が押し寄せ、新しい局面への転化をうながしています。この厳しい現実のなかでどう時代を読み、どう決断し、どう生き残っていくかを模索するのは大変なことですが、今、適切な判断を下していかないことには将来がありません。

●エンディングにかえて

 出版・印刷業界の勝者は誰なのか、それは15年ほど経てばわかるでしょうが、そのなかに私たちも生き残っていることを祈るばかりです。祈ってばかりいても仕方ないので、行動に移しましょう。文明社会に生きているすべての人間がWebという存在を抜きにしては語れなくなってきています。そしてこのコラムはもはやWebに適した文章構造を持っていないため生き残れないのです。
 また形を変えて再登場できるかのお約束はできません。いろいろな可能性を視野に入れておきますが、ひとまず「写植の現場から」というコラムは10回という区切りのいい今回でいったん休載させていただこうと思います。長きにわたってご声援ありがとうございました。またお会いできれば幸いです。

(2001/5/23発表)
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本コラム内容の無断引用、転載を禁止します。

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